変なテーマと変な旅 みうらじゅんさん【あの人の“旅”の話】

今気になるあの人に、こだわりの旅とおすすめの「旅リスト」を聞くインタビューシリーズ。

マニアックに仏像を訪ねて回る「見仏記」に、もらって嬉しくない土産物「いやげもの」、ご当地ソングを勝手に作る「勝手に観光協会」などなど、みうらじゅんさんの活動に旅は切っても切り離せません。日本のみならず世界をフィールドに津々浦々歩き回り、徹底的にオリジナルな視点で見たことを紹介してきたみうらさんの旅の話を聞きました。

旅のナビゲーターは“悲しいひと”

——— みうらさんに旅のエピソードを伺いたいのですが、正直どこからお話を伺えばいいものか……。

旅はね、生きてること自体、旅ですもんね。

——— 逆に、いま一番ホットな旅はなんですか?

ホットなねぇ……先日、実家の京都に帰って「法事の旅」をしました(笑)。しかも、おじいちゃんの三十三回忌と聞かされ、気が遠くなりました。もう、参列してる親戚全員あぶない状態なんですから。「次会うときは、この中の誰かの葬式で、また会いましょう」ってスピーチして帰ってきたんですけど。厄年と同じように、昨今延長してるでしょ、法事。厄年も前までは60歳止まりだったのにね。

——— 男性は42歳の本厄が最後だと思っていました。

いやいや、先は長いですよ(笑)。高齢化が進んだもんで、神社からまだ呼び出しがかかるわけです。たぶん、呼び出しがかかってることすら気がついてないひともいると思うんですけどね(笑)。

——— トリップアドバイザーには、オススメのスポットをまとめてリストや地図で一覧表示できる「旅リスト」の機能があります。あらためて、今回はみうらさんが過去に足を運ばれたスポットをリスト化させていただき、ユーザーにもあたらしい旅の形を提案できればと。

なんでも聞いてくださいよ。僕は「勝手に観光協会」で日本全国を二回りしてますから、大概なことは知ってると思うんですよ。グッとくる蝋人形ならこことか、海女だったらここにグッズがあるとか(笑)。地獄、菊人形、カニ。鍾乳洞も有名どころはほとんど行ってますし。

——— そもそも「勝手に観光協会」を始められたキッカケはなんだったんですか?

いや、かつての旅番組って一線を退いたタレントが行くものだったでしょ。泊まるわけですから当然、スケジュールにかなり余裕のある芸能人が選ばれるわけです。「すっかり忘れているけど、いたな」ってひとがお母さんとか連れて、のんびり温泉に行ったりするわけで、そこにはいやが上にも哀愁が漂います。それで思いついたんですが、そもそも一線もいってないひとが旅行に行く番組ってどうだろう?って、安齋肇さんを誘って、「勝手に観光協会」を始めたんですよ。

——— 旅のテーマは、いつもどちらが決めるんですか?

テーマなんてありません(笑)。ただ、安齋さんは旅行が嫌いだったもんで。それを好きになってもらう目的だったんですよね。それには現地で仕事をするのがいいかと。安齋さんはデザイナーなので、観光ポスターをつくらなきゃなんないっていう義務をつけました。そうなると俄然、ハッスルするものですよ。

——— 安齋さんと行った場所のオススメから教えてください。

龍馬歴史館>は蝋人形界ではオススメですね。龍馬の一生を蝋人形で描くなかで、姉が重要なポイントなんです。でも、姉さんの写真が残ってないもんで坂本龍馬が女装したみたいになっててね(笑)。

投稿者:Kazuyoshi S

——— ……姉の顔を想像でつくっているんですね。

モロ龍馬の顔におさげのカツラを被らせてね。少年時代の龍馬に川で泳ぎを教えてる光景らしいんですけど、妙なカンジでね(笑)。で、ずーっと巡っていくと途中から(展示されている蝋人形が)突然、ガンジーとか、マリリン・モンローになって終わる。途中までで龍馬の一生は再現したんだろうけど、それ以前に作っていたものを陳列する場所がなかったんでしょうね。龍馬の一生が、モンローの『7年目の浮気』で着地するなんて予想不可能ですから(笑)。いやぁ、見どころ満載なとこでした。いまどうなってるのかな?

——— 龍馬歴史館……ありますね! トリップアドバイザーの「香南市の観光スポット」で5位です。

5位って、また微妙ですねえ(笑)。「Ryoma 33」ってプリントしたTシャツも売店で買ったんですが、この33って背番号じゃなくってね、龍馬が33歳のとき亡くなったという意味で。いやあ、そんなのフツー背番号に打たないでしょ(笑)。

——— 享年が入ったTシャツ! ここは、リサーチしてから行ったんですか?

いや、するはずないじゃないですか(笑)。蝋人形館はね、ずいぶん国内も行き倒しましたけど、最終的に台湾まで行きましたから。台湾の蝋人形館には「ギネスに認定された世界一高い男の蝋人形」とかあるという噂だったんですけど、行った時には火事で消失してました。蝋はね、燃えやすいんですよ。だから、はやめに行っとかないとダメなんです。

これぞ現代アート! 

そうだ。思い出しました。長野県の〈蜂天国〉……ここはオススメですよ。まだ現代アートにも入っていないジャンルだと思いますから(笑)。

———(その場で検索すると)ホームページに“世界で初の世界一のスズメバチ芸術館”と銘打たれています。

置物を屋外に吊り下げておいて、そこに蜂が寄るようにしてるんですけど、スゴイでしょ。なんで土佐犬になんだって(笑)。逆さまに吊ってあるから、背中につくんですね。富士山を模した蜂の巣とか、(新幹線)あさま号が開通したときにつくった蜂の巣の新幹線とか。もうね、クラックラしますよ、ここは。行ったほうがいいですよ。鮭くわえた木彫りの熊とかね、ダルメシアンとか、いろんなものに蜂の巣をつけるアーティストがおられるんです。当然、店内も撮影可だったので、“インスタ映え”間違えないですよ。

投稿者:otou2015

本当は怖い菊人形

いま、日本で菊人形展やってるとこって少なくなりました。かつては大阪の〈ひらかたパーク〉が有名だったんですけど、なぜか99回目にして終わったんですね。僕は出身が関西だったもんで、小さい頃によくおばあちゃんとオカンに連れられて行ったんですけどね、マジ怖くてね。でも、大人は妙に「キレイ、キレイ」って言うもんで、それも怖いんです(笑)。大人って何を考えてんでしょうかね。

——— オススメは〈二本松菊人形(二本松城址)〉とのことですが、〈ひらかたパーク〉とはなにが違うんですか?

僕が見に行った時には菊人形2体で高村光太郎と智恵子さんショーがありまして。めっちゃ怖い上に動く菊人形はここだけですからね、要チェキですよ。後に僕、福島県の業者に自分の菊人形つくってもらったぐらい今では大好きで(笑)。

投稿者:Stefyfox

——— クレイジージャパンですね。

菊人形ってどこの文化なんですかね。いろいろ調べてみたんですけど、ルーツはわからないですよね。それもまた、怖いでしょ(笑)。

カニの甲羅の秘密

越前がにミュージアム〉って、まだありますかね? これも行ってほしいなあ。ミュージアム全体がカニの形をしていましてね、別に取り立ててあれなんですけど、カニの殻に黒い粒ついてるじゃないですか。アレ、一体なんだと思います? それはね、カニビルっていってヒルが寄生しているんですよ。

投稿者:747masayukis

——— え、寄生してるんですか?

『キル・ビル』の昔よりいたわけですカニ・ビル(笑)。あれ、たくさんついてたほうが美味しそうなイメージあったでしょ。それが〈越前がにミュージアム〉でわかりますから。あと、伊勢志摩は伊勢神宮がメインだけど、伊勢海老のオブジェが多いことでも有名なんですよ。僕はあえて「エビジェ」って呼んでるんです。基本、茹でてある色でね(笑)。なぜ、茹でてあるのか。それがいろんな商店の上に結構あるんで、それを巡られるのも一興だと思います。

——— こういったテーマはどうやって気がつくんですか? 普通のひとは素通りするか、変なの、で終わってしまうと思うのですが。

いやいや、誰だって気付くでしょ?(笑)。だって、変だもの。ま、小さい頃から「王様は裸だ」っていう真実を暴きたい気持ちが、あったんでしょうね。でも、段々と大人になってくると、それが見えなくなる。もう大人なんだからって思うからですよね。正直な気持ちで日本を周ると、おかしなものが目に付くということです。

日本全国「黒川さん」の旅

この銅像、日本全国にあって。僕は「黒川さん」って呼んでるヌー銅なんですけど。

投稿者:48HTLee

基本、ヌードの銅像ね。黒川さんのはオッサンで、裸でサックスを吹いてるんです。オールヌードなやつは〈箱根の彫刻の森美術館〉にあって。もう、股間も丸出し。後に作者が知りたくなって、判明したのが、黒川さん。

——— みうらさんが、最初に「この銅像は同じ作者だ」って気がついたのはいつ頃ですか?

大概、銅像は後ろに回ったら作者名が書いてあります。それ以来、「黒川さん、黒川さん」って思って旅してたんです。日本全国、いろんなところにあったんですよ。やっぱ、心に黒川さんさえ持っていれば見つけられるんだなって。黒川さん自身も各地のヌードサックスの写真集を出しておられたくらい、ものっすごいいるんですよ。旅も手慣れてくると、銅像作家で見分けられるようになりますから。

——— 言われてみると、裸の銅像って街なかに普通にありますよね。

そもそも銅像が、なぜヌードなのかってそこ、疑問じゃないですか。黒川さんに聞いたら「特に理由はない」って(笑)。

——— そういう情報ってネットに載ってないですよね。どうやって探したんですか?

だから、いつも念頭に黒川さんを思ってることですって(笑)。いっつも思ってないと、これは見つかりません。そもそも旅って、何があるかわからないから楽しいんですよ。無闇矢鱈に行って発見することが、旅の面白さだから。

——— みうらさんの場合、「黒川さん」以外にもいろんなものを見ようとされていますよね。

もちろん。20テーマくらい毎回、思いながら旅してます。

——— 発見した瞬間のお気持ちは?

そりゃ、見つけた瞬間は「やったー」のガッツポーズは出ますよね。声に出るときもあります(笑)。

ふたり、中年男性の旅

——— いとうせいこうさんとやっている「見仏記」についても教えてください。

始めたのは30年近く前になりますが、当初は編集者と3人で行ってたんですね。それがだんだんと2人っきりになって(笑)。だから、仏像を見て、その日決めた適当な旅館に入るようになったんですね。ある時、そこの女将がニヤニヤ笑って出迎えてくれて、僕はてっきりいとう(せいこう)さんのことをご存知で、笑ってるのかなと思ったんだけど、いとうさんも逆のこと思ってたらしくて。

お風呂も大浴場じゃなくて、ものすごく狭い家族風呂に通されて、途中で「お湯加減どうですか?」ってわざわざ見に来るんだよ(笑)。変だなーと思って部屋に帰ったら(布団が)重ね敷き。こないだも国東半島に行ったんですけど、やっぱり重ね敷きだったしね(笑)。広い部屋なのに、部屋の端の方に敷いてあるんだよね。で、いとうさんと「出たね」って。日本の旅っておばさんのふたり旅ってありだけど、おっさんの旅ってやりにくいんですよ。

——— 中年男性のふたり旅は、あまりないのかもしれませんね。

そこはね、JRの方が気を使って貰って「おとこふたり旅」っていうポスターでもつくってくれないとね(笑)。こないだ中国に行ったときも一人ずつ部屋とりゃいいのに、同室だからさ。なんか、そう思われる旅もだんだん面白くなってきて。それもまたね、旅の楽しみではあるなとは思いましたけどね。

常識がなければ「変な」ことを「面白い」と言えない

——— 「ゆるキャラ」が世間で認知されたのも、みうらさんが面白がってからでした。

あれは本当、最初はよく怒られてたもんですよ。「うちはゆるくない。何事か」ってね。ひこにゃん以降でしたね、「うちはこんなにゆるいので紹介してください」って言われたのは。

「国民体育大会」とか出てるゆるキャラは、その期間しか稼働しないですからね。だから、わざわざ地方まで行って、市役所に電話して「あの着ぐるみはいつ、どこで動きますか」って。イタいひとだと思われて、「ちょっとお待ち下さい、ちょっとお待ち下さい」って、途中で電話を切られたりもしましたよ(笑)。

そういう態度や行動を「興味本位はよくない」とか言うけど、面白いものは、最初、興味本位じゃなきゃ。ま、世間からしたら不謹慎ってやつなんでしょうけど。でも、常識って変わりますから。いつかはね。

——— 旅先で「面白いもの・こと」を見つけるコツはありますか?

やっぱ、常識がないことですかね。前に、街の看板で見つけた文字で般若心経を写経する「アウトドア般若心経」っていうのをやってたんですけどね、それも勝手にルールを考えて勝手にやったんですけど、なかなか見つからない文字に限って建物の奥の方にあったりするんでね。その看板の文字を撮るためには、どう考えても柵を乗り越えないと撮れないなんて場合もあるわけで。でも、乗り越えたら犯罪じゃないですか。

——— 乗り越えたんですか?

まあ、そこは当然乗り越えましたね(笑)。警報機があったのかそこの人が出てきましてね、「なにしてんですか」って言われるわけです。でも、説明がつかないことをやってるわけでね、こっちは。そこで「般若心経の文字を集めてて……」って言ってたら、もう完璧にアウトじゃないですか(笑)それをどうするか、ですよね。以降、看板を撮るために望遠カメラを持ち歩くようにしました。当然、そういう無駄な努力は必要になりますよね。

すべての旅は「見せる前提」

——— 変なものを見つけるには、常識の壁を超えないとダメですね。

変なものっていうか、日本のひとがもう麻痺して気がつかなくなってることですよね。仏像なんていい例で、(アーネスト・)フェノロサって外国人が明治に再発見したんですから。それで、「すばらしい」って言われてから、急に日本人も「いい! いい!」ってね。結局、日本人ってつくるのは得意なんだけど、再発見するのってものすごい下手な国民じゃないかと思うんですよね。

——— 当たり前すぎて、「面白さ」に麻痺している部分はあるかもしれません。

僕はずーっと小学校のころから、“在日観光外人”な気持ちでいますから。自分は外国人でいまはたまたま日本にいるって設定にすると、ずいぶん変なもんが見つかるもんですよ。昨日も、京都は外国人ばっかりだったけど、多分日本人が気づいてない面白いことをたくさん知ってますよ。

——— (取材場所の事務所に)ラブドールがあることも自然な気がして話していますけど、よくよく考えるとおかしなことですしね。

そう。買ってみないとわからないことってあるじゃないですか(笑)。(販売元の)オリエント工業の社長さんに聞いたら、これ買うひとは主に撮影目的なんですってね。旅館に同志が集まってみんなで撮影会したり、「夏場は水着を着せて、海水浴場で撮ってる」なんて。それも旅ですからね。いろんな旅があるけど、そこにあてはまらない旅行ってのもあるんですよ。

——— 自分次第であたらしい旅のカテゴリーは、まだまだありそうですね。

でも、僕のやってることってすべて、「見せ前(みせぜん)」なんですよ。何だって、発表して見せる前提だから。あと、ボケとツッコミのコンビで旅に行くと最高ですね。だって、ひとりで黒川さん(の銅像)を見つけて「やったー」ってやってたら、単にあぶないやつじゃないですか(笑)。

みうらじゅんさんの旅リスト
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みうらじゅん1958(昭和33)年京都府生れ。イラストレーターなど。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。1997(平成9)年「マイブーム」で新語・流行語大賞、2004年度日本映画批評家大賞功労賞を受賞。著書に『アイデン&ティティ』『青春ノイローゼ』『色即ぜねれいしょん』『アウトドア般若心経』『十五歳』『マイ仏教』『セックス・ドリンク・ロックンロール!』『キャラ立ち民俗学』など多数。共著に『見仏記』シリーズ、『D.T.』などがある。

撮影/高岡 弘  取材・文/金井 悟

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